柚木ミサトさんのイラストには説得力があった。福島で原発が爆発した時、情報らしい情報は何も伝わって来ず、スリーマイル島やチェルノブイリの事故の断片的な記憶が頭によぎり、ただただおろおろしていた。その頃SNSの中で見かけたのが放射能を可視化するために描かれた「赤いつぶつぶの絵」だった。
複雑な放射性物質の特性や被ばくに関する注意点を、イラストをふんだんに使い親が子どもに説明しやすいように便利な作りにし、大人でさえもこっそり勉強できるこの本は、当時なんの指針もなかった日常の脱被ばくのひとつの目印になり、ここから始まった人もいると思う。
柚木ミサトさんのイラストからは暗闇の中で少し安心をもらった。(虎月さんのツイートより)
放射線になんか、まけないぞ!
木村真三 監修
坂内智之 文
柚木ミサト 絵
太郎次郎社エディタス 発行
『放射線になんか、まけないぞ!』
2011年、原発事故の後の子ども向けの本ということもあり、放射線を知り、身を守るということを軸に描かれていました。
シーベルトとベクレルの違いとか、放射線と放射能の違いとか、今まで疑問にも思わず過ごしていたので、知れてよかったです。
木村真三(監修)『放射線になんか、まけないぞ!』本書で初めて「NIMBY」という言葉を知った。Not In My Back Yard=自分の裏庭にはあってほしくない、という意味。自分の裏庭にはあってほしくない存在は自分以外の誰かにとっても自分の裏庭にはあってほしくない。さて原発は?
国や企業は、時として私達を騙す。または重要なことを国民に知らせようとしない。まれに それと知りながらも あえて生命や生活を失うリスクを負わせようとさえする。過去の歴史の話ではない。今、まさに私達はそのような国で生きている。
『放射線になんか まけないぞ!』は 50ページほどのイラストブックで30分ほどで読める。子どもにもわかりやすく放射線が説明されている。内容は、事故の原因、放射線、被爆、放射性物質の広がり方、半減期、シーベルトとベクレルの違い。内部被ばくと外部被ばく、食の安全。大人も勉強になる。
本書は「東京電力福島第一原子力発電所で事故が起こって、たくさんの”放射性物質”が日本中にふりそそいだね」というショッキングな書き出しで始まります。でも放射線をこわがるだけではなく、みんなの未来をみんなで作ろう、と呼びかけています。内容はシビアですが、かわいらしいイラストと優しい語り口に勇気をもらえます。
そう。核廃棄物は、この先ずっと この国に残り続ける。
もしかしたら その時の為政者次第で私達の子孫が苦しむ日が来るかもしれない。だから日本の子ども達は放射線のことを知っていないといけないし、常にアップデートしないといけない。悲しいけれど、可哀想だけれど。それが現実だから。
子ども達が生きていく未来には 多分私達はいないから。
そんな「気づき」をもらえました。ほんとうに悲しいけれど。でも現実…。
東北から岐阜・静岡までセシウムが飛んだ時の地図と「これは福島県だけの問題じゃないんだね」という子どものセリフが刺さります。
今 汚染水の海洋投棄がSNSを騒がしています。丁寧に説明をするという政府側と断固拒否の福島県の漁業者。でも 海は地球上どこでも繋がっています。これも福島だけ、また日本だけのではない重い問題だと思います。
親子で、また学校で、みんなで読んで話し合って欲しい本です。
misato yugi 柚木ミサトさん
親は守りきれない
子ども自身が知らないといけないこと
日本中どこでも同じくらい必要なこと
私も勉強したいです
柚木ミサトさんの【あかいつぶつぶの絵】 がダウンロードできるブログです
おわりに
私たちは今何ができるのか。。どうすればいいのだろうか。。
子どもの頃から本が好きでなんとなく自分の趣味とか、知識欲のために読書をしていました。でもこの本を読んで「自分だけじゃダメなんだ、子ども達に伝えておかないと そして何度も何度も一緒に考えないといけないことなんだ」ということをとても強く思いました。柚木ミサトさんの言葉を借りるなら「それが必要ない地域など日本に無い」から。
これからもずっと放射線を出し続ける放射性物質、日本中にある原発施設、行き場のない核のゴミ。とても重いテーマですが、それを知ること、そしてみんなで考えることが大事だよ、とこの本は訴えています。
みんなで知ろう、そしてみんなで考えよう!
これ以上取り返しのつかない世界がやってこないように。。。
アップデートといえば、この本の2021年版もあったらいいな。こちらは編集も底なしだけど、きっと。
ちだい・著『食べる?』
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