本の世界の中でも、絵本や児童書は人文書や理工書と同じぐらい専門性が高く、子どもが口にするものと同じぐらい子どもたちにとってはデリケートなものだと思います。とりわけテーマがセンシティブになればなるほどです。親にとっても悩ましいところです。
「国会読書倶楽部」で絵本をどう扱うかは課題でした。そこで以前から気になっていたSNSでも積極的に発信されている「絵本のこたち」さんに政治や社会問題を扱った絵本のおすすめを聞いてみました。
今回紹介する5作品はどれもテーマがはっきりしたメッセージ性の強い本です。大人こそ読むべき作品であることにも気づかされます。気になる作品が見つかればぜひ本屋さんで買ってみて下さい。
(取材・写真 @karasumasuzaku)
ロベルトのてがみ
『ロベルトのてがみ』(好学社)
マリー・ホール・エッツ・作/こみや ゆう・訳
ロベルト君の一家はメキシコからアメリカへの移民家族です。
お父さんとお母さんは英語を話せないので、子どもたちもスペイン語しか話せません。5人兄弟の一番上の3年生のお兄ちゃんだけ学校に行って英語が話せます。ロベルト君は町に出て行ってもお店のキャンディーを悪気なく盗ってみたり、ゴミ箱ひっくりかえしたりしてしまい、大人に怒られるのですが、言葉がわからないので何を怒られているかわからないような状態です。
ようやく「子どもセンター」に入って、他の子どもたちとの集団生活や、言葉を教えてもらったりして社会性を身につけるにようになっていきます。
この本は移民の子どもが自分の生活基盤を整えていく過程やそのむつかしさが子どもの目線でリアルに描かれています。家族の中にもいろいろ問題があり、家族の物語でもあります。私たちももう少し移民の人の暮らしに気を留められるようになりたいです。
ポッコとたいこ
『ポッコとたいこ』(化学同人)
マシュー・フォーサイス・文と絵/青山 南・訳
ポッコはお父さんとお母さんがびっくりするぐらい活発なカエルの女の子です。お父さんとお母さんがあげた「たいこ」を一日中鳴らしています。
あまりうるさいので外で叩いてねと言われたポッコは、静かな静かな、静かすぎる森の中でたいこを叩いて歩きだします。すると色々な動物がついてきて仲間になっていきます。途中、仲間のうさぎを食べたおおかみに毅然と「バンドのなかまを たべるのは やめてよね、やめないなら バンドから でていってもらう」と睨んで言います。
ポッコのバンドの行列にはどんどん自分も自分もと次々と共感した動物が集まって演奏を続けます、やがてその勢いはポッコの家をもなぎ倒しますが、集団を率いているポッコを見てお父さんとお母さんは「すごく いいんじゃないか あの子!」と誇らしげです。
物事を変える最初はポッコみたいな「やかましくて騒がしい」何かなのかも知れません。実は言い出すものがいることで、自分もそう思う、共感できるという人も続くものです。
この本のもう一つ興味深いところは主人公のポッコはカエルの「女の子」で、ポッコのお父さんが料理作ったり、おかあさんがずっと本を読んでいたりと日本の一般的な家庭からみるとジェンダーが逆になっていて意図的なメッセージがあると思います。
女の子がムーブメントを起こして静かすぎる森を変えていくストーリー、楽しいですよ。
いつか、きっと
『いつか、きっと』(光村教育図書)
ティエリ ルナン・文/オリヴィエ タレック・絵/平岡 敦・訳
小さな島に子どもがひとり住んでいて世界を眺めています。
戦争や飢餓や、貧困、独裁政治などいろんな問題が見ています。
そんな世界をその子どもは悲観的にとらえているわけでなく、「いつかきっと」自分が汚れた水をきれいにしようと「いつか、きっと」自分が世界を変えようと能動的に考えています。
大人になるってそういうことですよね、誰かに期待するとかではないですよね。自立するということだけでなく、社会の出来事に責任をもつことがいつかきっと大人になることじゃないかと思います。(多くの大人には耳が痛いですね)
子どもたちには大人になったらもっといろんなことが出来ると希望を持って欲しいですね、そして大人はわが身を振りかえって欲しい。
個人的にはこの本の表紙が好きです、フランスの絵本なのに京都の友禅ぽくって美しいですよ。
ポリポリ村のみんしゅしゅぎ
『ポリポリ村のみんしゅしゅぎ』(かもがわ出版)
蒔田 純・文/おかやま たかとし・絵
「冬の間だけ氷の国からやってきて湖にいすわるドラゴンをどうしよう」
ポリポリ村の大問題です。
ドラゴンがいなければ冬の間も山で雪遊びやスキーも出来る、観光客もいつも通り呼び込めます。一方、山の麓ではドラゴンのうろこに細工したお土産が大人気です。村はドラゴンを「追い払う」「守る」で意見がわかれています。
村長は黙り込んでしまいます。
そこで意見のある者同士で新しい村長を決めることになりました。いろいろな意見を聞いて、自分の意見に近い人に投票しましょう、という話になりました。中には自分には関係ない、投票なんか行かないという人も出てきますが、最終的には「聞いてなかった」では済まなくなります。選挙にいかなくても自分の生活に関わってくることに気づきます。
これは選挙をわかりやすく説明する本です。
追い払う派は「青のページ」、追い払わない派は「赤のページ」と、ふたつのストーリーが盛り込まれていて、どちらを選ぶかで未来が変わっていくという仕掛けになっています。
みんなで「選ぶ」ということについて考えさせられて、「投票」に参加しなくてもその結果が自分の生活に振りかかってくることを教えてくれます。
あしたのための本(全4巻)
『あしたのための本(全4巻)』(あかね書房)
プランテルグループ・文/宇野 和美・訳
『民主主義は誰のもの?』『独裁政治とは?』『社会格差はどこから?』『女と男のちがいって?』の4巻セット(単品購入可能)で40年以上も前にスペインで出た本です。スペインが独裁政権から民主主義に代
わる時、子どもたちに「これからの世の中はこういう風に変わりますよ」ということ説明するための本だったようです。
そんな40年前の本に関わらず驚くほど、どれもこれも今の日本にあてはまっています。特に『女と男のちがいって?』は当時、一番時代遅れと書かれているにも関わらず今の日本そのままでつらいです。
個人的には、社会の仕組みは一部のお金持ちが決めているけど、実は数が一番多いのは労働者で、一番力を持っているのも労働者だと書いてある『社会格差はどこから?』がお薦めですね。
今回のおすすめ本の中で個人的には『いつか、きっと』がお気に入り。タイトルの音の響き、画の彩づかい、幻想的なのに妙な都会のリアルを感じる。そして母への想いに還っていくラストに、嗚呼、そうだ尾崎豊だって気づいた。
わたしは「あしたのための本 全4巻」が気になりました。
40年前に独裁政治が民主主義に代わる時の本を 今の日本で読まなければ…って恐ろしいやら情けないやら。。。でもこの状態で子どもたちにバトンを渡すわけにはいかないと。やらなきゃいけないことはたくさんある
中島みゆきのファイト!熱唱しちゃいますよ
ところで他の方の感想も気になりますよね。国会読書倶楽部に何度もツイートを寄せてくれているtantanさんから絵本の感想をいただきました。とても自然体ですてきな感想です。
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「絵本のこたち」さんを紹介します
今回 ご紹介した京都市伏見区の「絵本のこたち」さんの情報です!
お店は住宅地の中にあります、路上駐車など近隣に迷惑となる行為はご遠慮ください
古民家を改装した店舗、お店入る前から温かみが伝わってきます
ちょっと懐かしい感じのソファがお出迎え、差しこむ陽射しがやわらかく感じます
国内、海外作家問わず店主の熊谷さんのセレクトが冴えるメインの絵本棚
揃ってると嬉しい、安心の安野光雅コーナー(^.^)
店内展示やイベントなども積極的におこなっているのでお店の情報発信は要チェック
京都市伏見区の住宅地にある絵本専門書店。棚には積極的な仕入で目利き商品が並ぶ。地域の方のみならず、わざわざバスや車での来店のお客さんも。お店のSNSアカウントでのおすすめ絵本情報から政治の話など幅広い発信も人気がある。
京都市伏見区横大路下三栖辻堂町76
075-202-2698
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